夜をすり抜けて
死線を乗り越えた解放感でもあるのか、なぜだか二人して延々と熱唱し続ける。
日が暮れるまでそれは続いて
それはもう何だか笑っちゃうくらいで…
あはは、どんだけ盛り上がってんだ。
でも黙っちゃうと別れの時間がチラつくから
わたしはずうっと何にも考えずに、二人で楽しく歌い続けていたかったのかもね。
樹は、んー…真の歌好きか?
とにかく紙袋にあったCDを全部歌い切って
「あー、さっぱりした」
なんて彼は言った。
「ずっと…こういうふうに発散したかったのかもな」
「発散?」
「大声で歌ったりとか、がまんせずに泣いてみるとか…」
そう言ってから、樹はあわてて付け加える。
「あ、泣いてみるってのはお前な、真琴」
……ふふん。