夜をすり抜けて

「東京に戻るのが怖くなったか」


「ううん」


ポツンと訊かれて首を振る。


「それは大丈夫」




あのあと夜になってからも、何人からかメールをもらった。


サホちゃん達と同じく皆手を差しのべてくれている。


結局ヒロミからだけは返信がなかった。


それが答えなのかも知れない。


『もう一緒にいるのやめるね』


明日そう言おうと思う。


嫌なことを言われるかも知れないし、わたしも言わなくて済むことを言ってしまうのかも知れない。


そこから何かが始まるかも知れないし、終わるのかも知れない。




それでもそこを通らなければ、新しい手を取ってはいけないような気がして…
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