夜をすり抜けて

「家出少女、家に帰る、だな」


そう笑って、樹はわたしに家の電話番号を訊いた。


それをナビの目的地に登録すると、家までのルートが表示され案内が始まる。


目的地まであと40分とあった。


40分…!


それで終わり。




「メ、メ、メ、メールしていい?」


走り出した車内で

さっき一人で考えていた何とか言えそうな言葉を口にする。噛み噛みで…


「ああ、オレのも登録しといて」


運転中の樹が自分の携帯をふわっと投げてよこした。




よかったぁ…!


これでかろうじてつながった…よね?

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