夜をすり抜けて
「上野真琴だよ? わかってる?」
カーキ色の携帯に登録しながら声を弾ますと
「知ってるよ。上野さんだろ?」
と返ってきた。
スーッと息を吸い込み、ありったけの勇気をふりしぼって言ってみる。
「えっと……樹も淋しかったらメールしてきていいよ。電話でも」
「あはは、サンキュ」
なーんて彼は笑った。
…フン、笑うとこじゃないし。
「わたしだっていつまでも14歳じゃないんだからね。日々美しく成長して、すぐに18歳とか20歳になるもん」
「ふうん」
「……」