夜をすり抜けて
それから――
「あっ」と声を発し、彼はあわてて体をパッと離した。
「手か?」
「へ?」
「がんばろうの合図は、手だったっけか?」
コクコクとわたしがうなずくと、
樹の顔が赤くなった。
「ゴメン、まちがった」
どうやら手をギュッとするのと勘違いして、樹はギュッと抱き締めてくれたらしい。
あはは、いいよ、うれしかったもん、って言いたかったけれど、恥ずかしくて何も言えずに固まっちゃった…!
「いやぁどおりでな…。真琴、えらく大胆なことを言い出すんだなって思って、俺、ドキッとしたんだぜ」
なんて照れくさそうに言う。
真っ赤っかになったわたしの顔、見られちゃったな…。