夜をすり抜けて
トラックに戻るともう作業は終わっていた。
倉庫の敷地を出たところに停めた荷台の上で、相原樹はちょこんと胡坐をかいて携帯電話を見つめていた。
ステップを上ってわたしも隣に座る。
「あの、これ」
さっきの伝票を渡すと、彼はそれを確認して作業着のポケットにしまった。
「おばちゃん、何かくれたか?」
何だか人懐っこい笑顔で訊かれた。
「え、あ、お饅頭…」
「あはは、よかったな。気に入られたぞ」
完全に子供扱いだ。
「気に入られてるのはそっちみたいだよ、相原…さん? 何かえらくほめてたし」
「ああ、あのおばちゃんは基本誰のことも気に入ってんだ」
彼はそう笑って、それからわたしを見た。