夜をすり抜けて
「ゴメーン、手がすべった」
なんてヒロミが言って
他2名同じテニス部の仲良しだった子たちが
クスクスとくぐもったように笑う。
「やだ、もう」
と、なぜかわたしも薄く笑う。
「じゃあね、真琴、また明日」
キャハハ…
下校中の通学路、今度は目いっぱい楽しげな笑い声を立てて、彼女たちは駆けていく。
今日は顧問の先生の都合で、中学校の部活が中止になった。
ほっとしたのもつかの間、結局やられることはやられちゃうんだ。
「辞めよっかな、テニス部」
この数ヶ月、何度となく頭に浮かんでは振り払ってきた思いを、声に出してつぶやくと
少しだけスッとした。
三月半ば、晴れていてもまだまだ空気は冷たい。
ただ、空だけは馬鹿みたいに真っ青だった。
…なーんてね、ちょっとひたり過ぎ。