夜をすり抜けて
「代わりの便とか出せたらいいんだけど、うちの運送会社、車もドライバーもカツカツでな」
「そうなんだ」
「真琴のことは家の人と相談するけど、その…、今から駅まで送るから…電車で帰れる? 戻ってやれる時間がなくて…」
途端に歯切れが悪くなり、樹は困ったようにわたしを見る。
気にしてくれてるんだ。
「あ…けど、わたし、お金ない」
「それは出すよ。俺、浜松で真琴が新幹線に乗るとこまで見届けるから、東京駅から一人で帰れるか?」
「平気だよ。わかんないけど人に聞くもん。もう中三だよ、わたし」
あんま自信はなかったけれど、こんなふうに言いたかった。
「マジ助かる」
と樹はホントに助かった…って感じで小さく息をついて、それから話を元に戻す。
「でも、そんな無責任なことされたら親は怒るよな、やっぱ」
がっくりとうなだれる樹はちょっと可愛らしかった。