夜をすり抜けて


「もしもしお母さん?」


「あら、真琴、部活終わったの?」


「あのね、今、浜松」


「……って?」


「静岡県だよ」


「は?」


「ちょっと“家出”した」


「ええっ!!」


と声を上げたのはお母さんじゃなくて、横で聞いていた樹だった。


お母さんは黙って息をのんでいる。


「学校でちょっと嫌なことがあって、どっか遠くへ行ってしまいたくて…。トラックの荷台に勝手にもぐり込んで運転手さんに見つからないように隠れてたの」



(お、お前何言ってんだよ?)


隣で樹が口をパクパクさせている。



「でも今見つかっちゃって、家に電話しなさいって怒られた」


「そ…うなの?」

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