夜をすり抜けて
「ねぇお母さん、このトラックは今から広島へ行って明日の夜には東京へ戻るんだって」
「うん」
「あのね、わたしこのまま乗って行きたいんだけど」
「……は?」
「運転手さんは浜松駅で新幹線に乗せてくれるって言ってるけど、今はまだ一人になると途中で降りてどっかに行きたくなっちゃうから…。
消えてしまいたくなるから…」
「真琴?」
「わたしガチで家出しようと思ったけど、やっぱプチに切り替えるよ。
一日だけ解放されたら、明日の晩にはちゃんと家に戻ってまた頑張るから。
だから一日だけ好きにさせて」
「何…言ってんのよ、そんな非常識な。運転手さんだって迷惑でしょ?」
「別に構わないって言ってくれてるよ。すごく親切な普通の…おじさんだし」
と言いながら目が泳いで、不機嫌そうにこっちを見る樹の目とばっちり合った。うわ…