夜をすり抜けて
「でも、学校だって休まなきゃなんないじゃない」
「それも含めて、お願い、お母さん!」
と言いつつも、まぁ無理だろうなぁとは予想していた。
うちはよその家より門限とかも厳しいし、こんなこと絶対にきいてくれるはずないもん。
だけどまぁ、これなら樹も完全に被害者になるわけで、お母さんだって運送会社に苦情なんか言えないだろうと思ったんだ。
ところが、我が母は意外なことを言った。
「ちょっと運転手さんと話せるかな?」
「あ、うん。今替わる」
携帯を渡すと、樹はギロッとわたしを睨みつけ(どーすんだよ、バカ)と小声で言った。
それでも21歳はさすがに大人なのか、電話の向こうのお母さんには爽やかな声で応対してくれている。
「いえ、こちらの方こそもっと早くに気づけばよかったんですが、申し訳ありません!」
なーんてやってるし。