夜をすり抜けて
「ずっと……おかしかったもんね、あんた」
「え?」
「家出したくなるくらい我慢してたんだ?」
そうだった。
冬休みからこっち、ヒロミ達にハブられて以来、家では極力普通に過ごしてきたつもりなんだけど、お母さんだけはわたしの変化に感づいていたみたいなんだ。
「何かあったの?」とか「どした? 元気ないじゃん」って、しょっちゅうお母さんは訊いたよね。
図星だから余計イラッとして、わたしはいつもキレ気味に「何でもないってば!」なんて言葉をぶつけてた。
「…わかったから」
長い沈黙のあと、お母さんは言ったんだ。
「そのかわり明日の晩には、必ず家族のもとへ帰っておいで」
「お母さん?」
「待ってるからね! 消えてしまいたいなんて、もう言わないでよ」
う、明るくしてるけど、お母さんちょっと涙声だもん。ゴメン。