夜をすり抜けて
「なんだ、食わなかったの? あんこ嫌いか?」
「ううん」
「ダイエット中?」
「あ、いや、荷物運ぶのハードそうだったから、甘いものがいいかなと思って…」
わたしの手の上にちょこんと乗っかっているセロハンに包まれた小さなお饅頭を見て、樹はやっと笑顔になった。
「仕方ないから、買収されてやるか」
樹はセロハンを半分だけほどいて、小さなお饅頭をふたつに割ると、パクンとそれを口に入れた。
「甘っ」
あとの半分はわたしの分らしい。
そっと口に運ぶと、抑えた甘味がふわっと広がって何だか久しぶりにホッとした気分になった。
甘いものなんて毎日食べてるのにね。