夜をすり抜けて

「ちょっとデカイよ」


下に降りてそう言うと、樹は荷台の扉を閉めながら横目でこっちを見た。


「ヒモがあんだろ?」


つかつかと寄ってきて、彼はわたしの腰に手をまわす。


ヒェ…!?


スェットを引き上げてちょっと屈み、ウエストのヒモをきゅっと絞って蝶々結びにしてくれた。


小さな子供がお母さんに洋服を着せてもらってるみたい。


近すぎて、なんかドキドキしてた…。


幼児体型の下腹部を、今必死でへこませている。はは…




「ほらな、これで大丈夫だ」


得意げに笑った彼の顔はあどけないくらいに可愛くて


一瞬見とれる自分がいた。



火のように真っ赤になったわたしを見て、樹は若干うろたえて運転席の方へと行ってしまった。

< 34 / 163 >

この作品をシェア

pagetop