夜をすり抜けて

「酷いよなぁ?」


彼はすぐにまたいつもの明るい笑顔に戻る。


「き、訊いてゴメン…ね」


「ははは、よいよい」




お母さんに写メした画像は

眼鏡をかけた樹が2児のパパですって感じで優しそうに笑っているやつ。


フロントガラスに立てかけた子供たちの写真が、家族命のマイホームパパをさりげなく演出していた。



「おおっ、奇跡の一枚…!!」


なぜか激しく気に入ったらしく、樹はそれを待ち受けにしてはしゃいでいた。


「今カノに勘違いされても知らないよ」


「へ? 俺、今フリーだぜ」


「ふーん…」


ふーん
ふーん
ふーん




無事送信して、そのままコンビニで買い出しだよ。


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