夜をすり抜けて
「佐伯さんはいつも間に入ってかばってくれて、んで、あとですげぇ怒られるんだけどな俺」
「佐伯さんっていうんだ?」
「うん、俺勝手に懐いちゃって、仕事上がってからも、よく飯とか食わせてもらって、いろんな話をしたな」
樹はとても嬉しそうにその人の話をした。
「今でも?」
「いや、あの人はもう会社辞めちゃったからな…」
と彼は言った。
ふーん…。昔は尖がってたんだって。
今の人懐っこい笑顔からはちょっと想像しにくかった。
その佐伯さんって人も、きっと樹のことが好きだったんだろうな。
樹はそういう人だと思う。
明るくって優しくって誰からも好かれる人。
クラスにも一人くらいそんな男子がいる。
わたしとは…全然違う。