夜をすり抜けて
「シュークリームおいしいよ、口に入れてあげよっか?」
何気にそんなことを言ってから、わたしはめちゃ恥ずかしいことを口走った気がした。
樹はハンドルを持って前を向いたまま、体だけ少しこっちに傾け、素直に口を開ける。
身を乗り出してミニサイズのシュークリームをそっと樹の口に入れたとき、ちらっと一瞬目が合って、指先が彼の唇に触れた。
ドクン…っと、心臓が跳ね上がる。
わわ…
こんなんでいちいち動揺してるから、子供だと思われるんだ。
「サンキュ」
樹が笑う。
「うん」
素っ気なく返事をしながら、わたしは膝の上のパッケージに残ったミニシューの数を数えていた。
残りは全部、樹に食べさせることにしよう。なぁんて…