夜をすり抜けて
樹に伸ばしたわたしの手を、彼はぐっとつかんでくれた。
そのまま手を引かれて歩き出す。
大きな手…
「ぶっ飛ばして欲しかった?」
「え」
「警察沙汰になると荷物間に合わなくなるから…このまま行くぞ」
場合によっては、また迷惑をかけてしまうとこだったんだ。
「ご、ごめんなさい」
わたしが謝ると、樹は困ったような顔をした。
「それはこっち」
そして軽く息をつく。
「今度からは女子便の前でしっかり待っとくから。
…一応はあれだぞ。女の子だし、そういうことすると恥ずかしいのかなと思って、気を利かして先帰ったつもりだったんだ。
したら真琴なかなか戻って来ないし」
「うん、ごめん…」