夜をすり抜けて
「あのね、ありがと…助けてくれて」
「別に…」
見上げるわたしを彼がちらっと見た。
「助けてないよ」
「?」
「真琴が自分で逃げて来たんだ」
トラックの前まで戻ったとき、樹は一瞬、つないだ手をギュッと強く握って、それからパッと離した。
何かの合図みたいに…
ねぇ樹、今が楽し過ぎて勘違いしちゃうよ。
このままずっと一緒にいられたら…って
願ってしまうよ。
そんなこと言ったら、樹は笑っちゃう?