夜をすり抜けて
運転席に戻った樹は何事もなかったように車を出した。
ミラーを見て
それから軽く振り返ってサイドを確認しながら。
再び真っ暗な高速道が目の前に伸びる。
対向車線を通り過ぎる車のライトが、彼の顔を白く照らしていった。
樹は光の中にいるみたい。
さっきトイレで助けてくれたときも――
入り口の明かりの中に樹は立っていて
わたしがいる暗がりからは
それはちょっと眩しくて…
それでも真っ直ぐに伸ばしてくれたその手は
光の中へとつながっている気がしたよ。