夜をすり抜けて

「そんなやつらとは、もうつるむなよ」


「でも…」


「言ったろ? 世の中には向き合うのもばかばかしいやつがいるって」


樹の言葉が痛かった。


「親友…だったんだよ。
他の子達ともそうだけど、ヒロミとは特に仲良くて、クラスでも部活でもいつも誰よりも近くにいたから」


手首を捻挫して痛めたときもずっと心配してかばってくれたのはヒロミだった。


いつも帰り道くだらない先生の物真似をして笑い転げるのも二人だった。


恋バナもしたし、悩みも打ち明けた。


…そんなときもあったんだよ、わたし達。





「幻想だな、それ」


「え?」


「そんなものにしがみついてるから進めなくなる。絆なんて初めからなかったんだ」
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