夜をすり抜けて
トラックは走り続ける。
運転席の前にはお父さんの車よりもたくさんの種類のメーターがあり、運転しながら樹は時折その針に目をやった。
重い空気がまた車内に満ちてくる。
「…帰りたくない」
独り言みたいにわたしは言った。
「もう学校には…戻りたくない」
ずうっと心の中にあった言葉を絞り出す。
作り笑いを貼り付けた今の自分も
休み時間教室の席に一人っきりで座る自分の姿も
誰にもさらすことなく闇に葬りたかった。
「そんでも戻るしかないだろ?」
「樹と一緒にトラックに乗って働く。
わたし頑張るよ。荷物運んだりとか、ちゃんと手伝うから」
「いらねー…」
わたしの希望の灯りを、彼はいとも簡単に吹き消した。