夜をすり抜けて
「上の学校行ったって、就職して職場に入ったって、ママになっても、イジメはあるんだよ? ドラマでもやってたじゃん」
「……」
「あたしみたいな間抜けなのは、どーせどこでもハズされる。
ハズされないようにするためには、もっとずるく抜け目なくならなきゃダメなんだよ?
人を陥れても要領よく立ち回れる人間だけが、楽しく世の中を渡っていけるんでしょ?
樹はわたしにそういうふうになれって言うの?」
いつのまにか涙が頬を伝っていた。
「わたしはそんな人間になりたくないよ。
そんなふうには生きたくないよ。
こんなバカみたいな世の中なら、こっちから辞めてやる」