夜をすり抜けて
一瞬、お母さんの笑顔が浮かんだ。
ヒロミも、それからサホちゃんの顔も。
お父さんも…妹も…先輩も…
「い…やぁ、やめて! 死にたくない…っ」
わたしは思わず叫んでいた。
キキキ―――――――ッ!!
ブレーキの摩擦音が響いて
トラックはぎりぎりのところでカーブを曲がり
車体を傾けながら、反対側の路肩に突っ込むようにして止まった。
…――体がガタガタと震えている。
横を見ると樹はハンドルに突っ伏していて、ハンドルを握る指先がやっぱり小刻みに震えていた。