夜をすり抜けて
そのとき、外から大声が飛んで来た。
「おいっ、まだか、荷物」
「あ、はいっ、今出しまーす!」
運転手は、急にきびきびと荷台から駆け下りて行き、観音開きの扉を全開にすると、外で待っているここの会社の人に荷物の個数なんかを告げていた。
それから、彼はこっちに向かって言う。
「おい、お前も出とけ、邪魔になるから」
お前とか…。初対面ですけど。
わたしが荷台から降りていくと、会社のおじさんは驚いた顔をして運転手に訊いた。
「彼女か?」
「え…」
運転手が一瞬固まってしまったので、代わりにわたしがピョコンと頭を下げる。
「あ、妹です。」
「なぁんだ、妹さんかぁ」
おじさんはたちまち和んで「あー、よく似てるや」なんて適当なことを言ってくれたよ。