夜をすり抜けて
高速に戻る前、樹は路肩にスゥッと車を停めた。
「なぁ、もう泣くなよ…」
タオルをかぶって、ずっと泣きじゃくっていたわたしは顔を上げる。
横を見ると困り切った樹の目がこっちを見ていた。
「頼むよ」
いつもは上から来る彼の口調が、今回に限りしおらしい。
「…大人だって言ったじゃん」
「うん…」
「大人なら止める係でしょ? 間に合わなかったらどうなってたの? 対向車が来てたらどうなってたの?」
「ごめん」
「ごめんじゃわかんないよ…」