夜をすり抜けて

バツが悪そうにうつむいて
樹はお母さんに怒られた子供みたいに
鼻の頭をポリッと掻いた。


「何か…魔が差したっていうか、真琴の言う通りホントに世の中バカみたいだなーとか思っちゃってさ」


「…ダメじゃん、全然」


「うん」


「…」


「何ていうか、ずっと張りつめてたのが、プツッて切れちゃったっていうか」


樹は一つ息をついてから言った。




「…全部投げ出してしまおうかと思った」



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