夜をすり抜けて
「マジで言ってる?」
樹はフッと息をついた。
「だって、樹のせいじゃ…ないもん」
「真琴、女はもっとシビアになんなきゃ幸せになれないぜ」
「でも」
「保証人なんて重大なことに、うかつにハンコ押しちゃうような人間は信じらんないって。
あいつ、泣いてたよ」
「……」
「どっちが正しいか、わかるだろ?」
「樹…」
反対車線のレーンは遠く、対向車のライトは樹の横顔にはもう届かない。
「佐伯さんにうまくハメられたなって、知り合いからはよく言われる」
寂しそうに彼は笑った。