夜をすり抜けて
「絆があったと思うのは幻想だって言っただろ? あれは俺のことだ」
静かにきっぱりと樹が言った。
「そんなのにしがみついて、借金肩代わりして、んで、ときどき嫌になったりする。
…バカみたいだぜ」
「樹」
「まぁ俺の場合は法律的にも縛りがあるから仕方がないけど、真琴は自由なんだからさ」
「…うん」
「自分で自分を逃がしてやんなきゃな」
わたしは小さくうなずいた。
「家に帰るまで時間はたっぷりあるんだし、逃がし方は自分で考えてみ」
「はい」
クスッと樹が笑った。