夜をすり抜けて

「それ、何の合図?」


「え?」


「離すときギュッて」


「ああ…頑張ろうなって合図、かな?」


照れくさそうに樹は笑った。


「てか淋しいだろ? 手を離すときって」





「ふふ」


「何の“ふふ”?」


「別に。何でもない」




実は胸がキュンとしてた。


淋しいとか…突然乙女チックなこと言い出すんだもん。


樹は彼女ともずっとこうやって手をつないでたんだろうな…




4年間つきあっていたという綺麗な人。


借金の返済が始まったのが1年前だとすると、別れたのは20歳のときで…じゅ、16歳からつきあってたのか。




フー…と気が遠くなる。

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