夜をすり抜けて

16歳から二人一緒に
一歩ずつ大人になって…


きっとその人は今も樹の胸に住んでいる。


だって嫌いになって別れたわけじゃないもん。





あー、考えるのはよそう。



「何しょげてんだよ?」


「ちょっと…淋しくなっただけ」


ぽそっと小さな声で言うと、大きな手がわたしの頭にポコンと置かれた。


「今、カツ丼食わせてやっから」


いや、お腹はいっぱいですよ。




カウンターに食券を出すと、あっという間にカツ丼は出来上がり、二人向き合ってフードコートの席に着く。


「おいし…!」


「な」


カツは柔らかく、ふんわりとじた玉子が甘くて、うん、絶品だった!

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