幸運の器～Another Stories～

僕はすっかり、この日常になれてしまっていた。

また一人の日々が続くんだと、ちょっと寂しかったけど僕にはそれは身近なものだから、仕方がないんだと思うようにした。

だけど、その寂しくも平穏な日常は突然破られた。

「おーい、早川！」

なぜか桜井君のほうから僕に近寄ってきたからだ。

「な、何？」

僕はまぶしくて桜井君のことをまっすぐに見ることができなかった。

「何って。別に特に用はないけどさー。でも、転校してきてからなんだか全然しゃべってないだろう？だからさ」

そういって、桜井君は僕の前の席を陣取って座ってしまった。

僕は、桜井君と深く関わりたくないのに……。

「どうだ、匠？」

「えっ？」

「なんだよ、聞いてなかったのかよ。だからさ、今日、オレんち遊びに来ないか？」

「あの、そうじゃなくて、いや、えっ？」

僕の頭は混乱していた。