幸運の器~Another Stories~
桜井君はなんだか呆れたような顔をしていた。

ああ、また僕は嫌われちゃったのかな……。

「あははは。匠って面白いヤツだな。別に遠慮することないぞ。うちの家族は人が来るの大歓迎だからさ」

桜井君は、何か良いほうに誤解しているようだ。

それにしても、いつの間にか僕のことは早川から匠に変わってる。

「あの、何で名前で呼ぶの?」

「は?何だそんなこと気にしてるのか?だって、名前で呼んだほうが仲良くなれる気がするだろう?もしかして、名前で呼ばれるの嫌だったか?」

僕は首を大きく横に振った。

「ううん。そんなことないよ」

というより、同じ年頃の子供に名前で呼ばれたことなど今までなかった。

なんだか、とっても不思議な気分だ。

「そっか。じゃあ、オレのことも悠斗でいいからな」

「えっ?でも……」

「なーに照れてんだよ。こんなの最初が肝心なんだぞ。そんなに、深く考えんなよ」

「う…ん。わかったよ、悠斗」
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