幸運の器~Another Stories~
僕はその年、初めての恋をした。

今まで、こんな気持ちになることなんてなかった。

僕はずっと、人を好きになっちゃいけないと思ってた。

だから、誰かを好きになれただけでも奇跡のように思えた。


相手は、隣の席の佐藤綾子(さとうりょうこ)ちゃん。

長い黒髪をきちんとおさげにして、いつも姿勢正しく誰にでも親切な女の子。

綾子ちゃんも僕のことを嫌ってはいないようだった。

だけど、期待はしない。

だって、女の子はみんな悠斗のことが好きなんだから。

僕は、綾子ちゃんの顔が見れればそれでいいんだ。
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