幸運の器~Another Stories~
「おい、匠。追いかけなくていいのか?」

悠斗が心配そうに僕の顔を覗きこむ。

いったい誰のせいでこうなったと思っているんだ。

でも、どうせいつかこうなるはずだったんだ。

それが、今だったってだけのこと。

それで、いいんだ……。

「別に、いいよ。僕には関係ない」

「――そうか」

悠斗はそれ以上何も言ってこなかった。

その後から、僕は綾子ちゃんと気まずくなってしまった。

だけど、悠斗は相変わらず綾子ちゃんと仲が良い。

僕は、もうその輪の中に入れない。

僕の中の黒いものがまた大きくなっていく。

それでも、悠斗はいつもと変わらず僕の側にいる。

僕もいつもと変わらず悠斗を観察する。

また、平穏な日常が戻ってきた。

綾子ちゃんとは相変わらずだけど、今の僕には過ぎるくらいの幸せだ。
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