幸運の器~Another Stories~
『匠君へ

いきなりこんな手紙だしてごめんなさい。
でも、どうしても匠君に渡したいものがあるので、放課後屋上で待ってます』

それだけ書かれた手紙だった。

差出人の名前はない。

でも、僕宛なのは間違いない。

僕は心臓の音を耳元で聞いているくらいに大きく感じた。

いったい誰だろう?

やっぱり、バレンタインのチョコなのかな?

でも、期待しちゃだめだ。

僕をからかっているだけかもしれない。

行ったほうが良いのか、行かないほうが良いのか……。

でも、僕の足はゆっくりだけど屋上に向かっていた。

屋上に出るドアの前で僕は足を止めた。

一度大きく深呼吸。

別にいいじゃないか。

どんなことが待っていようとも、それはたいして僕の人生を変えるものではない。
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