幸運の器~Another Stories~
僕は一瞬迷ったけど、それを受け取った。

「ごめんね、匠君。ありがとう。匠君は私のこと嫌いだと思うけど、私……」

綾子ちゃんの口が何かを言っている。

「私、匠君のことが好きなの」

僕の耳はおかしくなっちゃったのかな?

今、確かに好きって聞こえたけど……。

「えっ?」

だから、僕は思わず聞き返しちゃったんだ。

「だから、私は匠君のことが好き。それだけ、どうしても伝えたかったの」

綾子ちゃんはやっぱり僕のことが好きだって言ってくれている。

「なん、で……?」

僕は天にも昇るほど嬉しかった。

だけど、どうしてもこんなことが起こるとは思えなかった。

僕のものは全部悠斗が持っていっちゃうんだから。
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