幸運の器~Another Stories~
その人は、僕の前にかがみこんで視線を合わせてきた。

「匠君、君には学校を転校してもらいたいんだ」

「えっ!?何で?」

「それが、お仕事だからだよ」

「嫌だよ。せっかく友達もできたのに。ねえ、別のお仕事はないの?」

お父さんに助けを求めたけど、お父さんはそっぽを向いたままだ。

「匠君、これは君にしかできないことなんだよ。お父様もそれを望んでいるんだよ」

僕はもう一度お父さんの顔を見た。

今度はこっちを向いてくれたけど、お父さんはただ頷くだけ。

「……わかったよ。僕、行くよ」

「さすが、ボスの息子さんだ。じゃあ、詳しいことはまた今度話すから、今はもう部屋に戻っていいよ」

その人は僕の背中をポンとたたくと、部屋から押し出してドアを閉めてしまった。

僕は、突然のことでちょっとボーっとしてたんだ。
< 3 / 31 >

この作品をシェア

pagetop