幸運の器~Another Stories~
泰治様が俺の側に来た。

「要(かなめ)。華音を頼む」

俺の肩に凭れるように泰治様がささやく。

「華音って?」

俺は泰治様をしっかりと支えながら、尋ねた。

「あの子の名前だ。これからは、あの子が百目鬼家の当主だ。要、どうかあの子をこの宿命から救って…やって…く…れ……」

「泰治様?泰治様ー!」

泰治様は、それ以降まったく動かなくなってしまった。

それが、泰治様の最期だった。
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