幸運の器~Another Stories~
百目鬼家では代々ある一つの決して破ることのできない掟があった。

それは、百目鬼家の人間が他人から器を奪って摂取できるのはその人物が産まれてから7年に1度のみ。

もし、同じ年に二人の人間が他人から摂取しなくてはいけなくなった場合、どちらか一方が犠牲にならなくてはいけない。

今年はちょうど、泰治様の摂取の年。

そして、たった今産まれたこの子供も百目鬼家当主の兆候が現れた。

泰治様は、自らの命に代えてこの子を守ったのだ。

だから、俺は泰治様の忘れ形見を今度は俺が命に代えても守ると決めた。


「龍ヶ崎?」

幼子がキョトンとした顔をしてこちらを見ている。

「どうした?どこか痛いのか?」

小さな手で、幼子は俺の頭を撫でる。

俺は、安心させるように微笑んだ。

「いいえ、姫様。私は大丈夫です。ありがとうございます」

「そうか」

幼子は、にっこりと笑って俺の手を取った。


~掟 完~
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