愛の療法
「お母さん・・・いえ・・・結衣さん。」
急に下の名前で呼ばれ、私の鼓動は早くなる。

「えっ?あっ・・・はい。なんでしょう?」
先生とうまく目を合わせられなくて必死で下を向いていた。


「あの・・・。」
真剣な先生の瞳に見つめられて私は思わず先生の手を振り払ってしまった。

「あっ・・・。」
私達の間に気まずい空気が流れる。









「あの・・・僕の顔に何かついてますか??」


突然の先生の拍子抜けした質問に私は驚いた。
「えっ・・・!?」
私が思わず顔を上げると先生は微笑んだ。
「やっと僕の顔見てくれましたね。」
「あっ・・・。」
私は恥ずかしくなって手で顔を覆った。



「ずっと下向いてて僕の目も見てくれないし、手も振り払われちゃうし・・・。」
そう言うと先生は私の頬を優しく撫でた。


「嫌われたのかと思っちゃいました。」
優しく微笑む先生の瞳の奥に赤らむ私がいた。



この時間がずっと続けばいいのに・・・・。
そう思っていた。
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