愛の療法
好き同士
この事件があってから私はなぜか「透先生」と呼ぶのを控えるようになっていた。
やっぱり啓介に対しての罪悪感があった。


啓介がベッドで寝ているのを確認して私は先生に話しかけた。
「あの・・・先生?」
すると先生は急に私の方を振り向いて私の手首を掴んだ。


「っ・・・せんせ・・・っ?」
先生の顔がすぐ近くにあって甘い吐息がかかる。
「なんで・・・下の名前で呼んでくれないんですか?」
真剣な先生の瞳に見つめられて私は顔を赤くした。


「別にっ・・たまたまです・・・っ。」
私は先生の瞳を直視できなくて目をそらした。


すると私の手首を掴んでいた先生の手が離れた。
「そうですか・・・。」
そう言う先生はどこか寂しげにも見えた。


このままじゃ・・・嫌いだって誤解されちゃう・・・・。


私に背を向ける先生を見て私は思った。


私・・・このまま呆られちゃうのかな・・・・・?そんなの・・・嫌・・・。










その思いが私の体を動かした。
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