愛の療法
私が病院へ行くとちょうど病院の玄関に石井先生がたくさんの書類を抱えて歩いていた。


「あのっ・・・石井先生・・・!!」
私の小さな声に気付かずそのまま石井先生は私の近くまできた。


そしてすれ違うギリギリの所でやっと石井先生は私の存在に気付いたようだった。

目が悪いのだろうか・・・?


「あ!啓介くんのお母さん・・・どうなされましたか?」

あの優しい瞳で微笑んだ。


「いえ・・・啓介が先生のこと気に入っちゃって・・・それに聞きたいことがたくさんあるんです・・・。啓介の喘息のことで・・・。」


「あの・・・ご迷惑でなければ・・・。」
私がそう付け足すと石井先生は笑顔で言った。

「大丈夫ですよ。僕はまだ大学から卒業して仕事に就いたばかりなのでそんなに忙しくないんです。」


「そうなんですか・・・。」

私達は訳もなく目を合わせると穏やかに微笑んだ。


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