*恋の味[下]*
−雷斗Side−
突然言われた冷たい言葉。
それには悲しみも混じっていた。
真麻は顔に出やすいから、俺がどういう行動をとれば悲しませずできるか…。
だいたいは出来ていた。
いや、つもりだったのかもしれない。
結果は……苦しませていたのかもしれない。
そう思うと、引き止めようとする足も。
言葉も考えも…。
何も出てこなかった。
動けなかった。
真麻がだんだん小さくなっていく。
ただでさえ小さいのに……、俯きながら歩く姿の背中は小さいものだった。
目では追えるのに…、足では追えない。
やっと動いた!
……そう思ったときは、もう三十メートルほど距離は開いていて、まるで俺らの心の距離みたいなものだった。
“人は傷つけ、傷つきながら生きていく”
“人は支え、支えられながら生きていく”
俺は傷つけているだけ。
支えてもらっているだけ。
「待てよ」
言葉も出せた!
……そう思ったときも、真麻は涙をポロポロ流していた。
その姿を見て、次の言葉を出すには時間がかかった。
何て言えばいいか、分からなかった。
誤解をとけばいいだけじゃないか……。
頭では分かってても、口が動いてくれない。
“女の涙は武器”
俺にとっては武器じゃなくて、“盾”のように見えた。