*恋の味[下]*
「待て…よ……」
もう一度出された、相手を止まらせる言葉。
1回目よりも弱々しく、溢れてくる涙は、もう嬉し涙か悲し涙か分からなくなっていた。
それでも涙は出る。
どんな理由か分からなくても…出る。
「泣くなよ…」
泣きたくないよ…。
でも止まらないの。
ただ、頬を濡らすだけ。
呼吸を乱すだけ。
……止めてよ…。
止めれるもんなら…止めて……。
「離れたくねぇ」
私もだよ…。
いくら私でも、雷斗の気持ち、ちゃんと分かってるよ。
素直じゃない私は、どこまでも愚か者。
「なに、よ…」
絞り出された声も言葉も……偽りだって…、気づいてよ…。
「愛してる」
………っ…!
なんで貴方は…、そんなに明るいの……。
なんで貴方は…、私を離そうとしないの……!
私は傷つけたんだよ…?
優しくしないで…。
私の心が歪む、歪む、歪む……。
“愛してる”
そんな甘い言葉(セリフ)、私なんかに言うなんて……。
自分が嫌いになる。
「めんどくせぇなんて……、思ってたらあそこまで必死にならねぇよ……」
“何度も言うが、お前しか愛せねぇんだよ”
儚げな声は、私の胸を突き刺しあげるだけ。