*恋の味[下]*
「じゃあ…」
意外にはっきりだせた声。
一切震えてなかった。
「なんで冷たいの…?」
ずっと聞きたかった。
ずっと言いたかった。
でも離れたくなくて言えなかった。
雷斗と離れるのを怖がってた。
「……俺、不器用なんだよ」
ため息混じりの小さい声。
ぶ、不器用……?
「不器用って……雷斗が?」
恐る恐る聞いてみると…、
「…しかいねぇだろ」
頭をガシガシかく音と共に聞こえた。
嘘……。
だって、アンタ……、
「器用って顔してる!」
「どんな顔だよ!」
どんな顔って……そりゃあ…1つしかないよ。
「意地悪い顔」
「首しめようか?」
え……、それってまさかの“死”みたいな?!
「NOーNOーオーNOー」
「………小野?」
「いやいや、英語だよ。イングリッシュだよ。Englishだよ」
天然か、オイ。
すると、いきなり笑いだした。
「ブッ、ギャハハハ!」
………ダレダヨ。
「んだよ、お前!どっからそんなバカになったんだよ!」
バシバシ叩きながら言うコイツ……逝かしてあげようか?
その手を払いのけて頭をグリグリした。
「アンタねー、デリカシーってもんがないの?!」
「イデデデ…、すまん!すみませんでした、真麻様!」
なんでか…、もう寂しさなんか忘れてた。
目の前の人間に、夢中で……。