*恋の味[下]*
止まらぬ涙
−翔Side−
参った。
参るよ、ホント。
1人残された俺は、警察がいなくなったのを確認すると、煙草に火をつける。
肺にいれて――吐く。
口からでた煙は空にあがり、やがて――消える。
空気と一体化する。
スーッとメンソールが喉を刺激する。
それを俺は黙って見つめる。
……蒼空に電話するか…。
アイツ、キレるかな?
あんまヘマしたことねぇから、分かんねぇや。
けど、今回はヤバい子をターゲットにされたからな……。
クソッ!
もうフィルターのところまで吸ってしまった煙草を思いきり踏む。
こんなことしても―――もう遅い。
俺は携帯を出し、電話帳を開く。
“倉橋 蒼空”の文字を見つけると、電話をかける。
……5かいほどコールがなると、不機嫌な低い声が聞こえた。
『…だれだ』
俺はとことんツいてないな。
「愛しの翔さまですよー」
『……チッ』
「こらこら、舌打ちしない。で、今どこにいたりする?」
『…家』
「ハハッ、寝起きか?」
『悪ぃかよ』
困ったな〜、寝起きの蒼空は苦手だ。
『何かあったのか?』
鋭いから……。
「ん〜、まあね」
冷静さを忘れない俺は――、
『フッ、空いてるぞ』
「あぁ、向かう」
感情のない、ロボットか――、
「コーヒー頼んだよ」
『チッ、生意気だ』
まだ、感情の薄れた人間がいい。