*恋の味[下]*
家についたときは、もう薄暗かった。
「ごめんね、いろいろ」
何に対して謝りたいのか、ありすぎて適当な礼になっちゃった。
決して感謝してないわけじゃないよ!
寧ろ、すごく感謝してる。
「このくらい、どーってことねぇよ」
柔らかく微笑むその顔を見るだけで、また安心できる。
「さっすが!私の彼氏!」
そう、いつものようにふざけて言った。
…が、いつもなら“俺だからだろ?”って感じで言ってくるとこ。
なのに、雷斗は微妙な笑みを浮かべる。
それにはすぐ気づいた。
「なによ、どうかしたの?」
ありきたりな台詞。
でも、本当に心配してるよ?
すると…、
“ヒュッ……、”
「雷斗?!」
間一髪。
急にバランスを崩し、フラフラな雷斗を支える。
男なだけあって、女の私にはキツい。
そんなこと考えてるヒマはないんだった!
「雷斗!」
よびかけるけど、返ってくるのは荒い息。
顔色も悪い……。
半信半疑で額に手をあてる。
「……っ?!」
すごい熱……。
私は雷斗をロビーの端に座らし、携帯でお父さんに電話をかける。
3コールくらいすると、
『おせーぞ、おい』
お父さんの声が聞こえた。