*恋の味[下]*
「お父さん?!私!真麻!」
『お、おう。…つうか、お前の携帯なんだから自分しか出ねぇだろうが』
ケタケタと笑う声がやたらと耳に響く。
「あのね、雷斗って分かるよね?!」
『あったりめぇだ、真麻の男だろ?』
「うん!…それがね、熱だしちゃって…」
『あ?…今どこにいんだよ』
「マ、マンションのロビー…」
『はぁ?!お前大の男を運んだのかよ?!』
「んなわけないでしょーが!…雷斗は家まで送ってくれて、それから倒れたの!」
軽く、軽ーく説明しないとね。
簡単すぎるけど、気にしない気にしない!
「でー…、今夜、家に泊めてあげていいかな?」
『………』
きっと、顔を渋くさせてる。
普通なら当たり前。
年頃の娘が彼氏をつれて泊まりにくるのだから。
………ってゆうかさ?
来ちゃったよ…、
とうとう来ちゃったよ…。
「うわ〜、しんどそ」
ウチのパパが。
「顔の色、トマトになってっぜ」
意味なく携帯を耳にあてて……、
「おーい、元気かー?」
オールジャージの……、
「こいつ、死んだな」
「バリバリ生きてるよ!」
わが父が。
「ギャハハ、死ぬわけねぇだろうが」
いや、知ってるよ。
言ったでしょ。
「あーもういいから家まで運んでよ」
「ヘイヘイ」
頼りないお父さんだけど、なんだかんだ言って心配してたんだな…。
めんどくさがりやが自ら来たんだもん。
雷斗、嬉しいね…。
やっと、認めてもらえたよ…。
私は心の中で、雷斗に言った。