*恋の味[下]*


沈黙のまま、視線が絡み合う。

お父さんの目は、なぜか鋭く感じる。

「もっと深くものを考えろ」

沈黙をやぶったのは、理解し難いお父さんの一言だった。

「どういうこと?」

少し固い表情のまま、聞いてみる。

「お前は何を思って、雷斗を連れてきた?」

ロビーの雷斗を運ぶときの表情とは、全くと言っていい程違う。

「……そ、れは…、熱出してるから放っておけなかった」

これは事実。

非常識なのは分かってるよ。

「俺なら許可だすと思ってたのか?」

………。

「女に凄い迷惑かけた男だ。そんな簡単にいれねぇだろ」

………なに、それ。

「仕方ないでしょ!私の所為でもあるんだから!」

意味わかんない!

またお母さん絡み?

いい加減にしてよ!

私はお父さんとお母さんじゃない!

私たちの関係なのに、なんでいっつも口だしてくるの?!

しかも、文句ばっかり!

そう叫んだ瞬間、お父さんは眉を下げた。

「わりっ、俺がどうにかしてた」

そういうと、コーヒーカップをおいて、リビングから出た。

……………。

「雷斗…」

やっぱまだなのかな?

「……っ…」

自分の愚かさに、涙がとまらない。


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